気になる子シリーズ (注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)診断基準等⑥

鑑別診断
 その他の神経発達症:注意欠如・多動症にみられることのある運動面の活動の増加は、常同運動症や自閉スペクトラム症のいくらかの症例で特徴づけられる反復性の運動行動とは区別しなければならない。常同運動症では、運動行動は一般的に固定的および反復的(例:体を揺する、自分を噛む)であるが、一方、注意欠如・多動症のそわそわやせかせかした落ち着きのなさは典型的に全般的なものであり、反復性の常同運動として特徴づけられることはできない。トゥレット症では、頻回で複数のチックが注意欠如・多動症の全般的なそわそわと間違われることがある。このそわそわを発作的な複数のチックと区別するには、長時間の観察を必要とするかもしれない。

 限局性学習症:限局性学習症の子どもは、欲求不満、関心の欠如、または限られた能力のために集中していないように見えるかもしれない。しかし、注意欠如・多動症を伴わない限局性障害の人の不注意は、学校での課題以外では障害されるようなものではない。

 知的能力障害(知的発達症):その人の知的能力に適合しない学業的状況におかれた子どもに注意欠如・多動症の症状が多く見られる。その場合、症状は非学業的な課題中では明らかではない。知的能力障害の人を注意欠如・多動症と診断するには、不注意または多動が精神年齢に比して過剰であることが必要である。

 自閉スペクトラム症:注意欠如・多動症をもつ人や自閉スペクトラム症をもつ人は、不注意、社会的機能障害、および対処困難な行動を示す。注意欠如・多動症をもつ人にみられる社会的機能障害および仲間の拒絶は、自閉スペクトラム症をもつ人にみられる対人関係の拒絶、孤立、および表情や声による意思疎通のきっかけに対する無関心さから区別されなければならない。自閉スペクトラム症の子どもは、出来事の成り行きが自分の思っているものから変化することに耐えられずかんしゃくを起こすことがあるかもしれない。対照的に、注意欠如・多動症の子どもは、衝動性または自制心不測のために大きな変化があると、無作法に振る舞うかんしゃくを起こすことがあるかもしれない。

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル参照