子どもへの支援とは?

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【臨床心理士の視点から】

子どもへの支援とは?

例えば、子どもが「学校に行きたくない!!」と言ったとする。その時、1⃣の場合は、社会のルールに影響されている、保育者の価値観から「学校は行くもの」という枠組みをもって子どもへのアプローチをする。
一方で、2⃣の場合、「社会のルールや」「保育者の価値観」という枠組みを一度置いておいて、子どもが身体で感じていることを、保育者も自分の身体で感じてみる。そうすると、「学校へ行きたくない!!」の訴える子どもの身体は、「不安であったり、心配であったり」することが保育者にも感じられる。これは、他者が「心配そうな顔をしたり」、どこかにぶつけて「痛そうな顔」をしていると、こちらの身体まで「不安」になったり、「痛そう」と感じたりする感覚である。
その、「子どもの身体」といった点をまず捉えることが、1⃣とは大きく違う点だ。そしてこれが「特性を生かした支援」のSTEP1となる。その上で、STEP2として、保育者が身体で感じていることを聴いてみる。そうすると、「子どもは、こんなに心配なんだな。でも、学校へ行ってほしいな。このまま行けなくなったら嫌だな」などの感じが出てきたりする。
そこで、STEP3として、このことを子どもに伝えてみる。つまり、「とっても心配なんだね。でも、学校へ行ってほしいな。このまま行けなくなったら嫌だな」。そうして、また子どもからの返答を聴いてみる。
それでも「どうしても行きたくない!!」と言ったときにどうするか。それが、STEP4の2⃣の大きな⇒の部分である。ここでは「社会のルール」に対して、どのようにアプローチをしていくかを、子どもも保育者も身体で感じつつ、一緒に見出していくのである。結果、「行かない」という選択もある。

1⃣のはじめから、社会のルール、保育者の価値観、ここでは「学校はいくものだ」ということを、子どもに当てはめるのではなく、STEP1の「子どもが身体で感じていること」から始まり、その感じを、社会のルールに影響されている、保育者の価値観に戻すのではなく、「保育者も身体で感じていること」というSTEP2につながる。そして、STEP3として、子どもに伝える、そてて、このやり取りの中から、STEP4につながる。

「子どもへの支援」を考えた時、往々にして、1⃣の対応をしてしまうことが多いように思える。しかし、2⃣では、「社会のルールや保育者の価値観」という枠組みからではなく、子どもも保育者も身体を通しての対話となる。こうすることで、保育者ももしかすると、STEP2の「保育者が身体で感じていることを聴いてみる」の段階で、「学校に行けなくなったら、周りからどう思われるだろう?自分の仕事ができなくなるんじゃないか」など、自分の心配することが出てきたりするかもしれない。つまり、「本人の為、ではなく自分の為」というところにいきつき、「ハッと」するかもしれない。
そうなると、「子どもに学校に行きなさい!!」と言っていたのは、「自分の為に言っていたんだな」と気付くと、子どもへのかかわりは変わってくるかもしれない。しかし、そこで身体で感じた「周りからどう思われるかって心配になっているんだ、お仕事ができなくなるって心配になっていたんだ」と、子どもの年齢に応じては、STEP3で伝えてもいいかもしれない。そうすることで、STEP4になり、もしかすると、「今日だけ休む」や「学校の先生に心配なことを一緒に話に行く」などが見出されるかもしれない。

ここで大切なのは、子どもも保育者も身体を通して、身体とぴったりと合っていることを伝えているということである。私たちも、たとえ言われたことが自分にとって「きつい」ことであっても、その人が「率直に、自分の感じていることを伝えてくれてるな」と感じると耳を傾けるものである。それが、「身体とぴったりと合ったことを伝える」である。
往々にして、社会のルールや、いままでの価値観からものごとを子どもに伝えることが多い。しかし、それは子どもの身体には入らず、保育者の頭から、子どもの頭へのやり取りとなる。それは、もしかすると保育者も頭では「当たり前、分かっている」としても、身体としてはぴったりと来ていないのだと思う。

最後に、「2歳児さんの散歩」を例にしてみる。散歩先から園に戻る際に、1人の子だけ「帰りたくない!!」と言っている状況だったとする。しかし、給食の時間は迫っていて、その後の午睡の流れや、「今日は、早くお迎えのくる子がいた」など保育者の頭の中にはいろいろなことが巡り、その枠組みから「もういいから帰ろう!!」のようなアプローチをしたりする。そうすると、子どもは余計に「帰らない!!」と言い張ったりする。そこで、今回のSTEPを振り返る。

STEP1
・子どもが身体で感じていることに焦点を当ててみる。
⇒「ああ、まだ遊びたかった。もっと虫探ししたかったな~」

STEP2
・子どもが身体で感じていることを踏まえながら、保育者が身体で感じていることに焦点を当ててみる。
⇒「ああ、まだ遊びたかったんだな~。でも、給食の時間も迫っているから、もう公園を出たいな~」
※この「保育者が身体で感じていることを、さらに聴いていくと「給食の食器を下げるのが遅くなると、給食の先生にどう思われるかな~」など自分のことが出てくるかもしれません。

STEP3
・「ああ、まだ遊びたかったんだね~。でも、給食の時間もあるから、先生は給食がみんなが食べ終えられるか心配だから、もう公園を出たいな~」
⇒子どもは、保育者の身体で感じた率直な言葉に納得するかもしれないし、「やだ!!」と返答するかもしれない。

STEP4
・「じゃあ、どうしようか?」
⇒子どもと一緒に考え、「じゃあ、あと少しだけ遊ぶ」や「園に帰って、違う遊びをする」などが見出されるかもしれない。

これは、一例にしかすぎませんが、このSTEPを意識せずに、常に枠組みから外れ、「身体で感じ、身体でぴったりしたことを表現していく」という状態になれると、子どもへの本当の支援になり、実は保育者のためにもなっているような気がします。