全般 1歳児

全般

意欲

□自我・思考

・1歳頃では、保育者に甘える中で安心して思いを出すが、他児とのやり取りはまだ未熟で、最も早い自己主張として「噛みつき」も見られるようになる。この頃はまだ「一人遊び」の時期であるため、一人で安心して遊べる環境を整えることが重要である。自分の身体を自由に動かすことができる身体体験により、「自分でできる」という気持ちが芽生え自我を発揮していく。また、物に名前があることが分かってくると、自分は誰々であるという自己確認が強くなり、好きな物に執着するようになる(自分の好きな物を確保することにより自己拡大を試みている)。それが玩具などの独り占めにつながり、独り占めをすることにより、玩具が気持ちの込められた物になり、玩具に込められた自身の気持ちに気づきそれが、自己を獲得していくことにつながる。2歳を過ぎる頃になると、“自分”という意識が芽生え、自己主張が強くなるとともに、やりたいこと、好きなことがはっきりしてくる。また、「自分の物」に対する所有欲が出てくる。例えば、お気に入りの靴や洋服なども出てきて「これじゃないと嫌」と言って困らせることも。自分の物ということを分かり始めた時期で、他者の立場に立てるのは、もっと後のこと。ありのままの自分自身でいいのだということ(=自己肯定)の経験を積んでいくことにより、意欲へとつながる。2歳6ヶ月~3歳に向けて、自己主張も強くなり散歩の時に、以前見た物を記憶していて、同じ場所に行きたがったり、しばしば友たちとのぶつかり合いが起こるようになる。一方で、「どうする」「どっちがいい」など選択することを喜んだり、目的をはっきりさせると見通しを持って生き生きと活動する姿も見られるようになる。

□探求

・1歳になるとより探索活動が活発になる。また、この頃狭いところに入ることも好む。1歳6ヶ月頃の自我の芽生えとともに、興味の持ったことを何でも自分でやってみようとする。2歳6ヶ月~3歳頃では、好奇心が盛んになってきて、保育者に「なぜ」「どうして」と尋ね、知ろうとする姿も見られ始める。

□挑戦

・2歳6ヶ月~3歳頃では、身近な用具の名前や使い方に興味を持ち、保育者と一緒に使いたがる姿が見られる。

情緒

□対相手・状況

・1歳を過ぎる頃になると、気に入らないことがあると引っ繰り返って泣いたり、助けを求めて泣いたりする。また、1歳6ヶ月前後には、したいこと、してほしいことは分かっているが、言語表現や動作が未熟で思うようにならないのに腹を立てて、大泣きや癇癪を起こす姿も見られる。2歳~2歳6ヶ月の間も、なだめても、叱っても自分の意思を通そうとしたり、思うようにならないとか癇癪を起こして大暴れして泣き、物に対して八つ当たりすることがある。2歳6ヶ月~3歳頃では、「自分でやりたい」と保育者の手を振り払う反面、「できるのにやって」という行動を通して、受け入れてもらえるかどうかを確かめる姿も見られるようになる。

□対自分

・1歳頃になると、特定の玩具や物に愛着を持ち、持っていると安定する物が出てくる。1歳6ヶ月前後では、「自分でやりたい」という願望と同時に、「自分でできる」という気持ちが強くなるが、まだ身体能力的に自分でできないため、激しく泣いたり怒ったりする。その気持ちを保育者に受け止めてもらうことにより、親しみと安心感を持つ。その経験を繰り返す中で、しだいに気持ちの切り替えができる時もでてくる。2歳~2歳6ヶ月では、保育者や友だちとのかかわりを深めながら、「嫌」「もっと」「もう1回」など、自分の気持ちを安心して表し自己主張が始まる。一方で、保育者に甘えたいという気持ちもあって、自分の感情がなかなかコントロールできない。そのため急に癇癪を起こしたりする。2歳6ヶ月~3歳頃では、自分の思い(つもり、考え)と保育者の要求がくい違うと、子どもはとっさに、自分を保育者の要求通りに変えなくてはいけないのかどうか、といった混乱を起こす(泣く、騒ぐなどは全身で表す行為自体が「言葉に代わる言葉」。この行為によって、自分の感情に直面して、いくら泣き続けても保育者は自分の思い通りになってくれないという時もあることが分かってくる)。

認知

□文字・数字・色

・2歳6ヶ月を過ぎる頃には、赤、青、黄などの色が分かり始めるとともに、赤くて丸いなど二つの組み合わせも分かるようになってくる。

□量・長さ・位置・形

・1歳頃になると、高さ、深さ、奥行き、裏側などを探ろうとする姿も見られる。また、1歳6ヶ月を過ぎると、同じ物に気づく姿も見られるようになる。2歳を過ぎると、「オンナジ、チガウヨ」など類似点、相違点を見つけたり、生活や遊びの中で色や形に興味を持ったり、物の大小に気づく姿が見られるようになる。2歳6ヶ月を過ぎる頃には、その姿がより顕著になり、大小、長短などを比較したり、分類したりすることができるようになってくる。そのため、玩具を同じ形に分けた片づけることもできるようになってくる。

□自他の区別

・1歳を過ぎる頃には、目、耳、口などが分かり、保育者が尋ねると触ったりする姿も見られるようになる。また、自分の家族や友だちの名前も理解し始める。物のやり取りでは、保育者が「ちょうだい」と言うと持っているものを渡したり、「持って来て」と言うと、言われた物を持ってくるなどの姿も見られる。1歳6ヶ月前後では、日常でよく使用する物やその場所が分かるようになってくる。2歳になるに向けて、欲求する(向かう=見る)という方向だけでなく、手助けされる(向かわれる=見られる)という経験を通して、「向かわれる=見られる」という方向を獲得していく。また、二つの物を同時に捉えて、操作の対象にできるようになったり、自分の物と友だちの物が分かり始める。2歳を過ぎる頃には、自分の持ち物が分かりまた、自分の物の置き場所が分かるようになる。日常生活の中では、他の子の名前が呼ばれた時は自分の視線が相手に向かうという経験をするが、自分の名前が呼ばれた時は、相手の視線が向けられるという経験などを通して、「自己」と「他」は異なる者であるという認識を獲得していく。2歳6ヶ月を過ぎる頃には、自分と他者、自分の物の区別ができるようになってくる。また、物事の共通性を見出したり、概念化する事ができるようにもなってくる。

判断

□対相手

・1歳を過ぎる頃になると、保育者の表情を見て危ないことに気づくようになる。

□対自分

・2歳6ヶ月を過ぎる頃には、善悪の区別が少しずつ分かるようになってくる。

□対場所・状況

・1歳6ヶ月前後には、保育者の言葉かけで危ないことに気づき、「だめよ」などの簡単な指示でやめようとする。また、2歳になる頃には保育者に促されて、生活の中の簡単な決まりや危険なことに気づく。2歳6ヶ月頃には、遊びや生活の中で、やってはいけないことがあることが分かるようになってくる。また、自転車や車に気をつけて歩くこともできるようになってくる。

五感

□視覚

・1歳代では、周囲1~2mくらいまでが良く見えるようになる。これはちょうど日常の生活に必要な範囲である。

□聴覚

・1歳を過ぎる頃には、聞いた音を真似て繰り返そうとする姿も見られる。また、音楽が聞こえると側に寄ってじっと見るなどの姿も見られる。2歳6ヶ月~3歳頃では、いろいろな音に気づき興味を持つ姿も見られるようになる。

□触覚

・1歳6ヶ月~2歳未満の間では、いろいろな素材に触れて遊ぶことを楽しんだり、水、泥を使って遊ぶことを楽しめるようになってくる。2歳を過ぎる頃には、保育者と一緒に、水遊び、砂遊び、泥んこ遊びも楽しめるようになってくる。

□嗅覚

・2歳6ヶ月過ぎには、いろいろな匂いに気づき興味を持つ姿も見られるようになる。