気になる子シリーズ ASD(自閉スペクトラム症)④

知的障がい(知的発達症)のないASDの子ども

知的障がいのないASD(以前、高機能自閉症と診断されていた)について学びます。
知的障がいのないASDは、知的水準が標準かそれ以上あり、特定の分野で非常に優れた能力を発揮することが多いため、「頭が良いのにわがままな子」と誤解されやすく、支援のニーズが見落とされがちです。そのため、支援の遅れるケースがしばしば見受けられます。
知的障がいのないASDの特徴として、集団の中に入ると感覚の過敏性やコミュニケーションのすれ違いから、不適応を起こすことがあります。家庭では親が子どもに合わせているため、ほとんど問題がないのですが、集団のなかに入ると子どもたち同士のトラブルが多く、ほかの子どもと同じ行動をとりにくいことから、保育者によってはじめて気づかれることも多くあります。
その際、保護者や保育者、教員などが知的障がいのないASDのことを学んでいないと、無理やり同じことをさせたり、集団に入れようとして、不適応状態がひどくなる二次障がいを引き起こす場合が多くあります。二次障がいとは、本来の障がいではなく、後天的に本人に合わない環境や人間関係により心が傷つけられるなど、二次的な障がいをさします。

○支援脳方法
知的障がいのないASDは知的に障がいがなくても、自閉症の特性のひとつである感覚過敏・感覚障害などがあるために、見え方、聞こえ方、感じ方の違いからくる不安と混乱を抱えていることがよくあります。
周囲の理解が不足している環境、たとえば成果だけを競い合う発表会や運動会、画一的な価値観による教育、人間の尊厳を傷つける強制的な指導などが多い保育所や幼稚園では、知的障がいのないASDの子どもは不適応がひどくなります。
子ども同士でも仲間外れ、からかい、いじめなどにつながり、子ども同士のトラブルから親の人間関係まで難しくなり、親子で孤立してしまうケースが現在、多く見られます。知的障がいののないASDは人一倍に繊細な心をもっており、才能豊かな子どもがたくさんいます。支援方法は、次のようにまとめられます。

①時間や空間が構造化され、わかりやすくシンプルであること
➁言葉だけを手掛かりにせず、絵、動作、シンボルなどのコミュニケーション手段を取り入れること
③繊細な感覚の違いを考慮した安らげる空間の準備や、いつでも相談できる体制づくりなど、一人ひとりの特性に応じたきめ細やかな支援が必要
④できないことを無理にさせるより、優れた才能を認めて伸ばす

親、友達、保育者などが彼らの特性を理解し、混乱や不安を最小限にするよう、お互いが自然にできる支援体制を整えます。

※障害児保育ワークブック(萌文書林)参照