気になる子シリーズ (自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害) 診断基準等⑤

性別に関連する診断的事項
 自閉スペクトラム症は女性よりも男性に4倍多く診断される。臨床症例では女性は知的能力障害を伴うことが多い傾向にあるが、知的能力障害または言語の遅れを伴わない女児は認定されずにいる可能性があり、おそらく社会的コミュニケーションの困難の表れがより軽微なためであろう。

自閉スペクトラム症の機能的結果
 自閉スペクトラム症の年少の子どもにおいて、社会的およびコミュニケーション技能の欠如は学習を妨げ、特に対人的相互反応を通じてまたは同年代の仲間と一緒の状況においての学習を妨げるかもしれない。家庭において、習慣へのこだわりおよび変化への嫌悪、さらに感覚過敏性は、食事や睡眠を妨げ、日常の世話(例:散髪、歯の手入れ)を著しく困難にするかもしれない。適応的技能は通常、測定されたIQよりも低い、計画、構成、および変化への対処における著しい困難は、平均以上の知能をもつ学生においてさえ、学業成績に負の影響を及ぼす。成人期では、これらの人は柔軟性のなさおよび新しいものに対する困難さが持続するため、自立を確立することが困難なことがある。
 自閉スペクトラム症をもつ人の多くが、知的能力障害を伴わない場合でさえ、自立した生活および有給雇用といった尺度で示されるように、成人の心理社会的機能が不良である。高齢期の機能的結果は知られていないが、社会的孤立やコミュニケーションの問題(例:支援要求の減少)が、成人期後期に健康上の結果をまねく傾向がある。

言語症群、社会的(語用論的)コミュニケーション症:言語症のいくつかの型では、コミュニケーションおよび二次的な社会的困難の問題がいくつかあるかもしれない。しかし、特異的言語症は通常、異常な非言語的コミュニケーションにも、限定された反復的な行動、興味、または活動の様式にも関連しない。
 ある人が社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応の障害を示すが、限定された反復的な行動または興味を示さない場合、自閉スペクトラム症ではなく社会的(語用論的)コミュニケーション症の基準を満たすかもしれない。自閉スペクトラム症の基準を満たす場合には、必ず自閉スペクトラム症の基準を満たすかもしれない。自閉スペクトラム症の基準を満たす場合には、必ず自閉スペクトラム症の診断は社会的(語用論的)コミュニケーション症の診断に優先されるため、過去または現在の限定的/反復的行動について慎重に聞き取るよう注意を払うべきである。

 自閉スペクトラム症を伴わない知的能力障害(知的発達症):自閉スペクトラム症を伴わない知的能力障害は、非常に幼い子どもでは自閉スペクトラム症と区別するのが難しいかもしれない。言語または記号の技能が発達していない知的能力障害をもつ人にも反復的な行動がしばしばみられるために、やはり鑑別診断が課題となる。知的能力障害を有する人への自閉スペクトラム症の診断は、社会的コミュニケーションや対人的相互反応がその人の非言語的技能水準(例:微細運動技能、非言語的問題解決)に比して優位に障害されている場合に適切である。対照的に、社会的コミュニケーション技能とその他の知的技能の水準に明らかな差異がない場合には、知的能力障害が適切な診断となる。

常同運動症:運動の常同性は自閉スペクトラム症の診断的特徴に含まれるため、このような反復的な行動が自閉スペクトラム症の存在によりうまく説明される場合には、常同運動症の追加診断は下されない。しかし、常同性が事象の原因となる場合及び治療の焦点となる場合には、両方の診断が適切かもしれない。

注意欠如・多動症:注意の異常(集中しすぎまたは注意散漫)および多動性は、自閉スペクトラム症を有する人によくみられる。注意欠如・多動症の診断は、注意の困難または多動性が同等の精神年齢の人に通常みられる程度を超える場合に考慮されるべきである。

DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル参照