全般 0歳児

全般

意欲

□自我・思考

・漠然とした欲求から、しだいに不快を表情やしぐさで訴えるようになる。不快に対し保育者が応えていくことで、快さを求めて人に向かうようになる。また、泣き方に表情がついてきて、眠い時の泣き方、甘えたい時の泣き方などに違いが出てくる。しだいに、自分の意思や欲求を指差し、身振りなどで伝えようとする。9ヶ月頃になると、独占欲が出始め、他児を押しのけて自分も抱かれようとしたりする。1歳頃になると、保育者に甘える中で安心して思いを出すが、他児とのやり取りはまだ未熟で、最も早い自己主張として「噛みつき」も見られるようになる。この頃はまだ「一人遊び」の時期であるため、一人で安心して遊べる環境を整えることが重要である。自分の身体を自由に動かすことができる身体体験により、「自分でできる」という気持ちが芽生え自我を発揮していく。また、物に名前があることが分かってくると、自分は誰々であるという自己確認が強くなり、好きな物に執着するようになる(自分の好きな物を確保することにより自己拡大を試みている)。それが玩具などの独り占めにつながり、独り占めをすることにより、玩具が気持ちの込められた物になり、玩具に込められた自身の気持ちに気づきそれが、自己を獲得していくことにつながる。

□探求

・生後まもなくから、視野の中に新しい刺激や、人の顔を特に興味を持つなどの選択性が見られる。2~3ヶ月頃になると、自分の手をじっと見つめる行為も見られる(ハンド・リガート)。しだいに周囲がまとまりをもったものと認識されると、手当たりしだいにいじるようになる。6ヶ月を過ぎると、物を落としたり、落とした物がどこにあるかを確かめたり、物を布などで隠すと中身を確かめようとする(対象の恒常性)。さらに、1歳になるとより探索活動が活発になる。また、この頃狭い所に入ることも好む。1歳6ヶ月頃の自我の芽生えとともに、興味の持ったことを何でも自分でやってみようとする。

情緒

□対相手・状況

・未分化で漠然とした感覚状態(気分)が世話をされることにより、保育者の声かけや気持ちのありように共鳴(保育者の気持ちに同感すること)し、感情を獲得していく。しだいに、むずがったり、怒ったり、甘えたりなどを声や表情で表すようになり、6ヶ月を過ぎる頃には、抱かれたくて声を出したり身をのり出したりする。また、その頃快さを求めて人へ向かった時、欲求が満たされる時と、そうでもない時があることを経験的に理解するようになる。1歳を過ぎる頃になると、気に入らないことがあると引っ繰り返って泣いたり、助けを求めて泣いたりする。また、1歳6ヶ月前後には、したいこと、してほしいことは分かっているが、言語表現や動作が未熟で思うようにならないのに腹を立てて、大泣きや癇癪を起こす姿も見られる。

□対自分

・1歳頃になると、特定の玩具や物に愛着を持ち、持っていると安定する物が出てくる。1歳6ヶ月前後では、「自分でやりたい」という願望と同時に、「自分でできる」という気持ちが強くなるが、まだ身体能力的に自分でできないため、激しく泣いたり怒ったりする。その気持ちを保育者に受け止めてもらうことにより、親しみと安心感を持つ。その経験を繰り返す中で、しだいに気持ちの切り替えができる時も出てくる。

認知

□量・長さ・位置・形

・1歳頃になると、高さ、深さ、奥行き、裏側などを探ろうとする姿も見られる。また、1歳6ヶ月を過ぎると、同じ物に気づく姿も見られるようになる。

□自他の区別

・生後まもなくから、母親の声を聞いている時に、他の女の人の声を聞いている時よりも、乳首をより強く吸うなどの区別が見られる。また、人の顔に注意を引かれる特性も持つ。6ヶ月を過ぎる頃になると、愛着関係を基盤とした保育者とのかかわりから、慣れない人に人見知りをする姿も見られるようになる。同時に、親しみを持っている人の後追いをする姿も見られるようになる。この頃、物の永続性も理解できるようになってきて、物が見えなくなっても「ある」ということが分かってくる。そのため、いないいないばあなどの遊びを楽しむようになる。1歳前後になると、自分の名前を呼ばれると「アーイ」などと返事をする姿も見られるようになる。玩具の遊びを通して、玩具を噛んだ時の玩具の硬さの感覚と、自分の手を噛んだ時の感覚(痛いなど)の感覚の違いを繰り返し、異なる感覚がフィードバックされる経験を通して、自分とそれ以外の物が区別されるようになっていく。1歳を過ぎる頃には、目、耳、口などが分かり、保育者が尋ねると触ったりする姿も見られるようになる。また、自分の家族や友だちの名前も理解し始める。物のやり取りでは、保育者が「ちょうだい」と言うと持っている物を渡したり、「持って来て」と言うと、言われた物を持ってくるなどの姿も見られる。1歳6ヶ月前後では、日常でよく使用する物やその場所が分かるようになってくる。2歳になるに向けて、欲求する(向かう)=見る)という方向だけでなく、手助けされる(向かわれる=見られる)という経験を通して、「向かわれる=見られる」という方向を獲得していく。また、二つの物を同時に捉えて、操作の対象にできるようになったり、自分の物と友だちの物が分かり始める。

判断

□対相手

・1歳を過ぎる頃になると、保育者の表情を見て危ないことに気づくようになる。

□対場所・状況

・1歳6ヶ月前後には、保育者の言葉がけで危ないことに気づき、「だめよ」などの簡単な指示でやめようとする。また、2歳になる頃には保育者に促されて、生活の中の簡単な決まりや危険なことに気づく。

五感

□視覚

・生後から3ヶ月にかけて、鼻先25cmの物がはっきり見えるようになる。また、つり玩具をじっと見つめたり、周りを見渡す姿も見られる。6ヶ月になるに向けて、周囲の動くものを目で追い(追視)、つかもうとする。6ヶ月を過ぎる頃から、人の動きを目で追う様子も見られる。1歳を過ぎる頃になると、周囲1~2mくらいまで良く見えるようになる。これはちょうど日常の生活に必要な範囲である。

□聴覚

・生後まもなくから、いろいろな音に反応する姿が見られる。3ヶ月を過ぎる頃になると、母親の声の区別ができるようになり、人の話言葉に注意を引かれる様子が見られる。またこの頃から音のする玩具を喜ぶ姿も見られ、戸外では、パトカーや飛行機の音がするとそちらの方向に顔を向けたりする。1歳を過ぎる頃には、聞いた音を真似て繰り返そうとする姿も見られる。また、音楽が聞こえると側に寄ってじっと見るなどの姿も見られる。

□味覚

・3~6ヶ月の間では、徐々に味覚が芽生え、味の違いが分かり始める。6~9ヶ月では、甘さ、酸っぱさ、苦さ、塩味を区別する。

□触覚

・生後まもなくから、口唇探索、吸飲反射などの口周辺の反射が敏感である。3ヶ月頃には、保育者の温かさ、声、におい、やわらかさなどの感覚を獲得する。また、窮屈や暑い寒い、強い音などの刺激で不快を泣いて知らせる。6ヶ月になるにつれて、手に触れた物を握ったり舐めたり、噛んだりする。1歳6ヶ月~2歳未満の間では、いろいろな素材に触れて遊ぶことを楽しんだり、水、泥を使って遊ぶことを楽しめるようになってくる。

□嗅覚

・生後まもなくから身近な臭い(乳の臭いなど)の嗅ぎ分けができる。